「人間の骨は大切にされるのに、どうしてペットの骨はゴミなの?」
「無念の思いを美しい花に咲かせたい」
殺処分ゼロを目指し、「いのちの花プロジェクト」と名付けた活動を始めた女子高校生たちの物語です。
(生きるために生まれてきたのに、どうして人の手によって、
いのちを奪われなくてはいけないのだろう)
青森県動物愛護センターをたずねた女子生徒たちは、いたいけな犬たちが「殺されてゆく」ことに、大きな衝撃を受けました。
みんなの胸に、ケージの中でふるえていた、犬たちの悲しげな瞳がよみがえったといいます。
殺処分された動物の骨が事業系廃棄物として処分されていることを知った女子生徒たちは、
無念に死んでいった犬たちの骨を、ゴミではなく、せめて土に返してあげたい、そして美しい花を咲かせたい、
そう考えました。
2012年春、高校2年生だった向井愛実さんは愛護センターの見学後、放課後の何気ない会話の中で、自分たちにも何かできないかと話した。
担任の先生にも相談し、骨が肥料になることを知った。
そこで思い付いたのが、骨をまぜた土で花を育てる「命の花」だった。
「骨をごみにしたくない。単純にその思いだけで始まりました」と向井さん。
愛護センター側は生徒たちの計画を好意的に受け止めた。
前例のない遺骨の引き渡しに、法令上問題がないかなどをすぐに調べた。動物の焼却灰は法令上、廃棄物(ごみ)以外の何物でもないことを、改めて知る結果となった。
担任は当初、生徒たちへの批判を心配したという。
動物が好きな人からはおおむね受け入れられたが、
苦手な人からは「気持ち悪い」「かえってかわいそう」などの否定的な声もあったからだ。
だが向井さんは「動物が嫌いな人がいるのは仕方がないこと。でもそれにかかわらず、命の大切さは訴えるべきだ」と話す。
引き取った骨は土に混ぜるために、細かく砕いてふるいにかけなければならない。その作業は想像以上につらい作業となった。
レンガを使って手作業で骨を砕いていく。
中には燃え残った鑑札、首輪の金具、リードの留め具、歯なども出てくる。自然に涙があふれでた。
出来上がった土に、全員で種をまく。無念の死を遂げた動物たちに、一粒一粒祈りをこめるように。
向井さんの卒業後、今年も後輩たちが活動を継続している。石橋香織さん(現在3年)は「最初は正直、やりたくないと思いました。でもその内容を知るうちに、亡くなってしまった命を、せめてもう一度花として育ってほしいと思うようになりました」と話す。
育った花は、さまざまなイベントなどで来場者に配られます。来場者は花を通して殺処分の現状や、その思いを引き継いでいく。
◆全文を読む:殺処分された動物の骨に咲く花 | 今井尚
生徒たちは自分たちよりも下の年齢に伝える必要も感じ始めていて、今年は中学校の道徳の授業で出前授業もはじめたとのこと。
今後は紙芝居もつくってさらに低年齢の子どもたちにも訴えていくそうです。
テレビでも活動が取り上げられました。【動画】
「みなさん、犬の骨で花を育てるなんて、たぶん、ビックリされたと思います。
でも、私たちは、骨を砕くという作業を、涙を流しながら行ないました。
辛くて、悔しくてたまりませんでした。
でもいちばん苦しんだのは、処分されたペットたちです。
だから……、殺処分の現状を何とかつたえたいと思って、骨を砕きました」
生徒たちによってこの2年間で配られた“いのちの花”は、1300鉢を超えました。
そのひとつひとつに、死んでいった犬たちの“いのちのかけら”が、
花となって、大切なことを伝えてくれます。
・ペットショップで命を買わない(愛護センターから引き取ったり里親になる)
・安易に増やさない
・命を預かることに責任をもつ
ことをみんなが徹底すれば、殺処分0(ゼロ)は決して不可能なことではありません。
岩手県内でトリマーになることを目指す向井さんが、自らの体験をまとめた本
出版社からのコメント
この本で描かれた、青森県三本木農業高校・愛玩動物研究室の『命の花プロジェクト』は「農業高校の甲子園」と呼ばれる第64回「日本学校農業クラブ全国大会」文化・生活部門で最優秀賞(文部科学大臣賞)を受賞、日本動物愛護協会主催の第6回日本動物大賞でグランプリに輝きました。