みさおおばあちゃんと、生まれつき耳の不自由な猫のふくまるの暮らしは、こうして始まりました。
写真家・伊原美代子さんの初写真集『みさおとふくまる』(弊社刊)は、2011年秋に刊行され、
日本国内のみならず世界中で多くの人の心を捉え、現在までに7万部を発行する大ヒット写真集となりました。
伊原さんは学生時代から現在まで、
14年にわたり、おばあちゃんの撮影を続けています。
ここ数年で撮影された写真から、『みさおとふくまる』が生まれました。
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ある暑い夏の日、みさおおばあちゃんが54年連れ添った旦那さんが、亡くなりました。
大きい悲しみを感じながら、涙を見せる事も無く夫の死を受け入れる姿は、
季節ごとに咲いては散ってゆく花を見つめるように自然だったと、伊原さんは言います。
それから、おばあちゃんを写す日々がはじまりました。
やがて、納屋で野良猫が子供を生みました。
そっと見守ることにしたおばあちゃん。
でも、一緒に生まれた兄弟たちは次々に亡くなり、
一人ぼっちで寂しそうなふくまるを、おばあちゃんは飼うことにします。
「ふくまる」という名前には「福の神様が来て、すべてが丸く治まるように」という
おばあちゃんの願いが込められています。
ふくまるはオッド・アイ。
オッド・アイは白猫か白斑猫にしか発生せず、目が青いと耳が聞こえないというケースが多いんですね。
気づけばおばあちゃんとふくまるが出会って8年。
すっかり耳の遠くなってしまったおばあちゃんと生まれつき耳が不自由なふくまるは、
いつも見つめ合い、お互いを感じ合っています。
畑についていったり、洗濯や、料理を見ていたり、ちょっとイタズラしてみたり。
おばあちゃんの暮らしの中には、いつもふくまるが自然に寄り添っています。
かけがえのない大切な何かを失っても、どんな嵐がやってきても、
幸せが溢れ出しそうでも、その日々は、もう二度と無い一時、一日。
動じずにただひたすらに生きることが出来れば、すべてが好日。
おばあちゃんとふくまるは今日も畑へ出かけます。
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■みさおとふくまる
■みさおとふくまる さようならこんにちは
「お日様の下を生きる事ができれば、すべてが好日。
今日もいい日だね、ふくまる」